中国の地下経済 (文春新書) 〜中国の現状把握と、将来を予測するために必読!中国の民需が増えない理由がわかりました。

中国の地下経済 (文春新書)
富坂 聰
文藝春秋
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今年一番の衝撃をうけた一冊と言っていいと思います。


最近、NHKスペシャルで「灼熱アジア」という特集が放送されており、毎回興味を持って拝見しています。
この映像を見ると、とにかく今の中国には勢いがあることがわかりますが、それがあまりに急激すぎて、なぜそれに脆弱な経済が対応できているのか不思議ではありました。


その謎が、この本にありました。


ただ、残念なことに、著者のテクニックではあると思うのですが、演出が非常にうまく、中国の現状は伝わってくる(ジャーナリストっぽく)ですが、要点がまとまっていない気がします。


僕なりに受け取った中国の現状は以下の3点かと思いました。

  • ものすごい資金需要に公的な金融機関では追いつかないので、アングラな金融機関が発展していた。
    • アングラであるということは法整備されていないということなので、問題点が多いことは察しがつくと思います。
  • アングラマネーを支えているのは、表世界の役人などに渡された賄賂品を換金する際にも利用されており、表の世界と裏の世界が表裏一体化している。
    • この状況は癒着を生み、正常な競争をはばみ、膨大な市場に支えられてGDPは成長しているが、独自のブランドを持った企業がほとんどない。有力な企業はほぼ元国有企業。金融緩和政策もこの元国有企業を儲けさせることしかなく、民に金が流れていない。
  • 裏と表の貧富の差が激しく、いつ暴動が起こってもおかしくない。
    • 暴動が起こらない理由はアングラマネーが支えているからという、これまた非常に危険な状態。



先進国になるには民需が増えてこないといけません。しかし、中国ではいっこうに増えない。その理由は多数を占めるアングラ世界では貧しい世帯が多い。
リーマンショック後の金融危機の影響を受けなかった理由もわかりました。それは、金融世界が関わらないアングラマネーが中国の市場の下支えになっているからです。そのかわり、世界と切り離されていては、成長に限界があり、いつ崩壊するかわからないという現状であることが理解できました。


やっぱり文春新書の内容は、はっとさせられる内容が多いです。